5つの投資信託を、同じ条件で比べる

この記事で算出した接点ポートフォリオは国内株式(TOPIX)20%、先進国株式(除く日本)60%、先進国債券(除く日本)20%になりました。1 この比率は、今回の標本と固定した条件でリスクフリーを差し引いたシャープレシオが最大になった配分です。 同じ計算でも期間や制約を変えると結果は動くため、誰にでも当てはまる購入比率や将来の保証ではありません。

入力に使う商品と共通期間

対象は、eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)、eMAXIS Slim 先進国株式インデックス(除く日本)、eMAXIS Slim 新興国株式インデックス、eMAXIS Slim 国内債券インデックス、eMAXIS Slim 先進国債券インデックス(除く日本)です。 商品名と指数の対象は、三菱UFJアセットマネジメントのeMAXIS Slim商品案内および各商品の公式資料に合わせています。

履歴は三菱UFJアセットマネジメントの投信情報APIから取得した5商品の基準価額を使いました。 5商品すべてで利用できる各月の月末以前の最終日を選ぶと、基準観測は2017年7月31日、比較期間は2017年8月から2026年7月までになります。

月次リターンは、前月からの基準価額の変化率を使います。 eMAXIS Slimは分配を抑制する設計で、公式の分配金実績に関する案内でも設定来の分配金がない扱いを確認できるため、今回は分配金を加味していない通常の基準価額の変化率を使いました。 分配が確認される期間を同じ方法で分析する場合は、分配金再投資の基準価額に関する公式説明に沿って再投資系列または分配金を加えた計算へ置き換える必要があります。

リターン・リスク・相関をどう作るか

各月の単純リターンをrtr_t(月ttの値)とし、その108本の平均をr‾\overline{r}とします。 年率リターンは、月次リターンの算術平均を12倍した値です。

年率リターン=12×r‾\text{年率リターン}=12\times\overline{r}

月次リターンの標本標準偏差をsrs_rとします。 年率リスクは、srs_rに12\sqrt{12}を掛けた値です。

年率リスク=12×sr\text{年率リスク}=\sqrt{12}\times s_r

標本分散は、平均との差の二乗を足し、観測数から1を引いた数で割った値です。 その平方根が標本標準偏差です。 この年率化は、月次の観測を年単位の比較へそろえるための計算上のルールです。 共分散も月次の標本共分散を12倍し、年率ベースの共分散にそろえました。 共分散行列から分散を求め、その平方根を年率リスクとして扱います。

5商品の結果は次の通りです。

商品年率リターン年率リスク
国内株式(TOPIX)13.34%14.11%
先進国株式(除く日本)17.59%16.19%
新興国株式12.21%18.21%
国内債券-1.81%2.44%
先進国債券(除く日本)4.70%5.92%

相関係数は、二つの商品の月次リターンが同じ方向へ動いた程度を表します。 配分のリスクを計算するときは、相関係数を共分散へ変換します。

cov⁡(i,j)=corr⁡(i,j)×σi×σj\operatorname{cov}(i,j)=\operatorname{corr}(i,j)\times\sigma_i\times\sigma_j

ここでσi\sigma_iとσj\sigma_jは年率リスクです。 MIT Sloanのポートフォリオ理論公式にも同じ関係が示されています。

TOPIX先進国株式新興国株式国内債券先進国債券
TOPIX1.0000.7730.6580.0570.403
先進国株式0.7731.0000.7350.1130.530
新興国株式0.6580.7351.0000.0270.357
国内債券0.0570.1130.0271.0000.202
先進国債券0.4030.5300.3570.2021.000

相関が1だとその2商品は全く同じ値動きです。 -1だと真逆の値動きです。 相関の低い商品を組み合わせると、異なる値動きが組み合わさることで、基本的にはリスクが下がります。

一つの商品から5つの組合せへ

配分ベクトルをww、年率リターンのベクトルをμ\mu、年率共分散行列をΣ\Sigmaとします。 ポートフォリオの年率リターンと分散は、次の式で計算します。

リターン=wTμ\text{リターン}=w^{\mathrm{T}}\mu 分散=wTΣw\text{分散}=w^{\mathrm{T}}\Sigma w

5つの比率はすべて0%以上、合計は100%、各比率は5%の倍数に限定しました。 全部で10,626通りです。 全10,626通りを計算し、図にはその中からランダムに100例を固定表示しています。 効率的フロンティア211点と接点も、図の表示対象に含めています。

個別商品は散布図上の5つの点になります。 100例は、5商品の点を単純に結んだ線ではなく、相関を含む共分散から計算した組み合わせの点になります。

散布図の読み方

横軸は年率リスク、縦軸は年率リターンです。 点が右にあるほどリスクが高く、上にあるほどリターンが高い位置です。 左上に行くほどリスクが低くリターンが高い良い商品です。

  • 候補ポートフォリオ 100例
  • 効率的フロンティア
  • 国内株式(TOPIX)
  • 先進国株式(除く日本)
  • 新興国株式
  • 国内債券
  • 先進国債券(除く日本)
  • 接点
  • リスクフリー点
  • 資本市場線

図:5商品、候補ポートフォリオ(100例)、効率的フロンティア、リスクフリー点、資本市場線、接点ポートフォリオを同じ座標で示します。

効率的フロンティアと接点ポートフォリオ

同じリターンでリスクが最小のポートフォリオ、もしくは同じリスクでリターンが高いポートフォリオを集めたものを効率的フロンティアと呼びます。

詳しくはMarkowitzのポートフォリオ選択論文を参照してください。 今回の記事では将来の期待値ではなく、過去の結果から計算した年率リターンを使っています。 10,626の候補から得られた効率的フロンティアは211点でした。

シャープレシオは、ポートフォリオの年率リターンからリスクフリー率を引いた値を、ポートフォリオの年率リスクで割って求めます。 Sharpeによる定義の説明も、超過リターンを変動性と比べる指標としてシャープレシオを扱っています。

この値が最大になる5%刻みの配分を、今回のグリッド上の接点ポートフォリオとしました。

今回の接点ポートフォリオの配分

2026年8月21日に入札された第1402回3か月国庫短期証券の加重平均年率利回りは1.0816%でした。 発行日は2026年8月24日、償還日は2026年11月24日です。 財務省の入札結果が公表する年率の入札利回りを、今回のシャープレシオ計算へそのまま入力しました。 これは3か月証券の市場入札利回りであり、個人の預金金利や借入金利、税引後の投資収益を意味しません。

その入力でシャープレシオが最大になった配分は次の通りです。

商品購入比率
国内株式(TOPIX)20%
先進国株式(除く日本)60%
新興国株式0%
国内債券0%
先進国債券(除く日本)20%
合計100%

この配分の年率リターンは14.17%、年率リスクは12.69%、シャープレシオは1.031でした。 資本市場線は、リスクフリー点(年率リターン1.08%、年率リスク0%)と、この接点の二つの端点を結ぶ参考線です。 図の横軸と縦軸の幾何学的な傾きと、シャープレシオの値は同じものではありません。

期間と入力を変えると、配分はどれだけ動くか

比較期間を共通の直近5年、2021年8月から2026年7月までの60本の月次リターンへ置き換え、ほかの条件は同じにしました。 この場合にシャープレシオが最大になった配分は、国内株式(TOPIX)70%、先進国株式(除く日本)30%、残りの三商品0%でした。 年率リターンは18.53%、年率リスクは12.56%、シャープレシオは1.390です。

観測期間を少し変えるだけで、平均、リスク、相関の組み合わせが動くことを示します。 過去の期間を一つ選んだときの最大値を、そのまま将来の推奨比率へ読み替えることはできません。

この配分から分かること、分からないこと

全期間では国内株式20%・先進国株式60%・先進国債券20%でしたが、直近5年では国内株式70%・先進国株式30%へ動きました。 期間を変えただけで配分が変わったことが、この計算で最も重要な観察です。

参考資料

リンクと内容は2026年8月26日に確認しました。

脚注

  1. 2017年8月から2026年7月までのeMAXIS Slimの5商品の月次データを、空売りなし・合計100%・5%刻みで比べた結果です。 ↩