eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー、以下オルカン)に手元資金600万円を投資するとき、「一括投資」と「毎月10万円の積立(5年間・60回)」ではどちらが有利でしょうか。 一般に「一括投資が有利」と言われる大きな理由は、初日から全額を市場に置くため、投資している期間が長くなるからです。 そこで本記事では、毎月10万円の積立に対して、投資するタイミングを変えた3つの一括投資(開始日一括・中央一括・終了日一括)を用意し、過去33通りの期間(各5年間)で比較しました。 検証の結果、投資期間がまるまる5年間ある「開始日一括」が最も高い評価額となった一方、積立と平均の保有期間をそろえた「中央一括」では、33期間中20回で積立が上回りました。
積立と3つの一括投資、何が違うのか
手元の600万円をもとに、2018年11月から2021年7月までの各月を開始月とし、それぞれ5年後(60か月後)の同じ日に評価しました。 比較したのは、以下の4つの手法です。
- 開始日一括: 初回の実購入日に600万円を一括投資します。資金は5年間まるまる市場に置かれます。
- 中央一括: 積立の購入日(60回分)の平均日付近まで現金で待ち、そのタイミングで600万円を一括投資します。保有期間は約2年半となり、積立の平均保有期間とほぼ一致します。
- 終了日一括: 60回目の積立購入日と同じ日に600万円を一括投資します。評価日までの保有期間は約1か月のみです。
- 毎月積み立て: 毎月15日付近に10万円ずつ60回に分けて投資します。各回の資金が市場に置かれる期間は「約5年」から「約1か月」まで分散され、平均すると約2年半になります。
初日に投資する「開始日一括」と、最後に投資する「終了日一括」を並べることで、「市場に置く期間の長さ」が成果にどれほど影響するかがひと目で分かります。 そして「中央一括」を見ることで、投資期間の長さを約2年半でそろえたときに、一括と積立のどちらが優れていたのかを公平に比べられます。 ただし、平均の保有期間をそろえても、毎月少しずつ買う積立と、1日に全額を投じる一括とでは、途中で経験する価格の振れ幅や最大下落などのリスクまで同じになるわけではありません。
なお、待機資金の利息は0円と仮定し、購入手数料・税金・売却費用は計算に含めていません。 分配金の現金受取や再投資は別途計算せず、公表されている通常の基準価額のみで評価しています。1 評価日までのデータが確認できる2021年7月開始分(評価期間は2023年11月〜2026年7月)までの全33回が対象です。
グラフで見る4つの投資手法の推移
以下のグラフは、33の開始月ごとに、5年後の最終評価額をプロットしたものです。 「積立」、「中央一括」、「開始日一括」、「終了日一括」を載せています。 横軸は開始月、縦軸は5年後の評価額を表します。
- 積立
- 中央一括
- 開始日一括
- 終了日一括
グラフを見ると、4つの手法の特徴がはっきりと分かります。
最も高い位置にあるのが開始日一括です。 5年間まるまる世界株の上昇相場に乗ったため、多くの期間で1,200万円〜1,600万円台に達し、突出したリターンとなりました。
一方、最も低い位置にあるのが終了日一括です。 評価日までの運用期間が約1か月しかないため、相場上昇の恩恵をほとんど受けず、評価額は元本600万円の周辺(約555万円〜668万円)にとどまっています。
そして、その2本に挟まれた中央付近を推移しているのが、積立と中央一括です。 積立と中央一括は開始日一括と終了日一括の間に位置し、積立と中央一括の順位は開始月によって入れ替わっています。
具体的な数値をいくつか見てみましょう。
- 2018年11月開始:開始日一括 1,224万円、積立 932万円、中央一括 834万円、終了日一括 625万円(積立が中央一括を約98万円リード)。
- 2020年4月開始:開始日一括 1,464万円、中央一括 890万円、積立 849万円、終了日一括 555万円(中央一括が積立を約41万円リード)。
- 2021年7月開始:開始日一括 1,487万円、中央一括 1,100万円、積立 1,085万円、終了日一括 611万円(中央一括がややリード)。
このように、開始時期の相場環境によって、積立が勝つ時期と中央一括が勝つ時期が分かれます。
平均保有期間をそろえた主比較(積立 vs 中央一括)
では、保有期間を約2年半でそろえた「積立」と「中央一括」に絞って、33期間の成績を詳しく比較してみましょう。
| 指標 | 積立 | 中央一括 |
|---|---|---|
| 評価額の平均 | 999.70万円 | 976.05万円 |
| 評価額の中央値 | 1,010.00万円 | 985.33万円 |
| 600万円に対する平均損益 | 399.70万円 | 376.05万円 |
| 評価額が高かった回数 | 20 | 13 |
33期間のうち、積立のほうが評価額が高かったのは20回、中央一括は13回でした。 評価額の平均でも積立が約999.70万円と、中央一括(約976.05万円)を約24万円上回っています。
初日に投資する開始日一括には及びませんが、今回の33期間では、保有期間を同じ約2年半にそろえた積立投資の評価額が高い結果となりました。 積立は毎月資金を投じるため、途中で相場が下落したタイミングで安く口数を多く買い増すことができます(時間分散効果)。 対する中央一括は、約2年半後の特定の1日に全額を投じます。 同じ評価日の基準価額なら、購入時の基準価額が高いほど買える口数が少なくなり、評価額も小さくなります。
ただし、ここで比較した33の期間は、5年間の期間が互いに大きく重複しています。 独立した33回の勝負ではないため、この「20勝13敗」という比率がそのまま将来の勝率を表すわけではありません。
どちらの手法を選ぶべきか
「一括投資のほうが積立より儲かる」と言われるのは、主に開始日一括のように「資金を最初から長い期間市場に置いたから」という理由が大きいです。 しかし、暴落への不安から手元に資金を残し、徐々に市場に入れていく方法にも、今回のように購入日を分けて続けやすくする考え方があります。
手元資金を一度にすべて投じる方法を選ぶなら、開始日一括は資金を長く市場に置く選択肢です。 一方で、「まとまったお金を一気に投資するのは怖い」「途中の値下がりで後悔したくない」と感じるなら、毎月の積立投資を選ぶ考え方もあります。
参考資料
- 三菱UFJアセットマネジメント「ファンド情報API」 — オール・カントリーの公式基準価額データ。
- 三菱UFJアセットマネジメント「基準価額の変動要因」(2026年9月12日確認) — 基準価額に影響する要因。
- 三菱UFJアセットマネジメント「分配方針」(2026年9月12日確認) — 分配方針。
脚注
-
購入予定日および評価予定日は、該当日以降で最初に確認できる営業日の公表基準価額を使用しています。 中央一括の購入日は、各期間における積立購入日(60回分)の平均日に最も近い営業日としています。 実際の注文時刻、購入手数料、税金、待機資金の利息、分配金の現金受取・再投資、売却費用は含めていません。口数は小数で計算しています。 ↩